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乙川優三郎さんの『霧の橋』、こんな作家がまだいたのか。


 乙川優三郎さんの『霧の橋』(1997年 講談社 2000年講談社文庫)を、読みました。本書は第7回時代小説大賞の受賞作。主人公は武士の家の次男に生まれるが、父を殺され、病弱な兄に変わって仇討ちの旅に出る。十年に及ぶ放浪の旅をし、偶然に江戸で仇に出会い、これを見事に討ち果たす。国元に帰ってみると、家を継いだ兄は公金横領で処刑されて、家族は離散。彼もまた追放処分となる。再び江戸で窮乏生活をしていたとき、一人の娘が浪人者に襲われているところを助け、その娘の父親から人柄を見込まれる。娘と結婚し刀を捨てて商人となるが、商人の世界にも、商人どうしの争いがあり、心から商人になりきれない主人公は……。

 時代小説は、藤沢周平さんが亡くなってから、「今後、時代小説に魅力的な作家は現れないだろう」と一人勝手に思い込み、読むのをやめていた。10年近く、時代小説は読んでいなかった。それが、知人のススメで佐伯泰英さんを知り、また時代小説を読み始めた。そして乙川優三郎さんの『霧の橋』を一読、藤沢周平さんに代わる作家の登場と思わせる読み応えのある作品なのだ。


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